■巻頭言 埼玉放射線Vol.53 No.5 2005

「なぜ、いま」

社団法人 埼玉県放射線技師会

会長 小 川  清




かった夏も過ぎ去り、朝晩めっきり涼しくなり、すごしやすい季節となってきました。山の稜線もぼんやり見えていた状態から群青色としてはっきり見えるようになり、風も秋の香りを乗せてくるようになりました。 

 さて、会長に就任し半年が過ぎようとしております。理事会も3回開催させていただき、少しずつではありますが、私の考え方を理事の皆様にお伝えし、審議し賛同を得て会務運営に生かしております。会員の皆様方には、現在の時点においてはっきり実感できないかと思いますが、確実にローからセカンドにシフトアップしております。本会の活動に関しては、できるだけ公開し会員の皆様の協力を得ながらすすめていきたいと考え、会誌やホームページの充実のみならず、新しい情報伝達手段についても検討しております。





て、本会は平成15年度に放射線管理士・機器管理士認定講習会を開催し、128名の受講者を得て、70名以上の認定者が誕生しました。この講習会は大変有意義なものであったと認識しておりますが、一方では閉塞された医療界から飛び出し、防災活動に活躍して国民に貢献しようというメッセージを受け、そして偶発的なJCO原発事故の影響で会員の受講気運が一時的に盛り上がっていたことも事実と思います。しかし私が本会の巻頭言(平成15年4号、HPにも掲載有り)に書かせていただいたように、JCOの事故は当然あってはならない事故であるが、交通事故のように毎年多発する事故ではないこと、そして認定資格を得て、その知識や技術を実際の業務にどのように生かせるかはっきりした結論が見いだせないことなどから、その受け皿を構築できなかったことが現状でありました。日本放射線技師会学術・教育部門報告によれば平成17年現在、放射線管理士部会を発足しているところは17技師会、機器管理士部会は6技師会と報告されています。本会も含めて半分にも達していないのです。その理由としては更新制度が本来の目的である放射線管理や機器管理という実務にあまり触れることなく、学術大会の参加や座長資格、鈴鹿での研修会の参加ポイントにウエイトをおいた内容であったことや、「サーベイメータの操作法もわからない認定者が多くいるそうだ」と風評されている事実もあげられると思います。



して「なぜ、いま」であります。放射線管理や機器管理が大切で重要と考えつつも「施設の中でどのように管理体制を構築したらよいのか、あるべき姿を示してほしい」という意見もよく聞きます。そこで放射線管理、機器管理など放射線技師業務として大切ではあるけれど多くの人の興味を得られないような事柄についても、有識者に協力を求めて技師会がコアとなって積極的に構築していくことも重要と考えました。日放技の更新制度も、より実務的な活動内容におもむきをおいて、日常活動をポイント化して、施設に応じた実績を積み、それが更新制度に生かせる内容に変わりました。本来あるべき姿に一歩進んだと評価してよいでしょう。




は、放射線管理・機器管理士部会はどのような活動が望まれるのでしょうか。本県は本当に住みよい地域で、地震・洪水・暴風雨などの自然現象によって起こる天災事変が少なく、また原発が存在しないので、原発事故対策の行政的な防災ネットワークに参画することもありません。しかし情報社会のなかで、国民の行動範囲が広まり時間的な幅が縮まって、他県でのアクシデントが直接に県民に影響を及ぼすことについては当然ながら支援体制を構築していくことは必要とは考えていますが、それが優先度の一番ではありません。

 では、どうあるべきでしょうか。ポイントは2つあると考えています。1つめは公益法人、社団法人としての責務です。特定の会員のみならず一般市民特に埼玉県民への貢献が評価される時代に、医療被ばく相談や放射線に関するわかりやすい情報提供、地域健康祭りなどへの積極的な参加であります。2つ目は診療放射線技師が働いている医療の中で、本当に活かせる、また活かすべき事象を中心に検討して行くべきと思っております。つまり医療被ばくに対する専門家の育成であります。お陰様で本県には放射線管理や医療被ばくに精通した会員が在籍しており、その方々を講師にして勉強していけば優秀な会員のことでもあり早期に専門家を輩出できると思います。

 医療経営の厳しい今、医療人としてその貢献度が問われている今こそ、医療被ばく相談等、放射線に関する質問に診療放射線技師が各施設においてすべて対応していることをはっきり打ち出すべきと考えております。以上のことをふまえて今、放射線管理士、機器管理士部会の創設を準備しております。ご支援ご協力宜しくお願いたします。