2006

No.3

埼玉放射線Vol.54

■巻頭言

個人プレーからチームプレーへ
埼玉県放射線技師会  会長  小川 清

 ワールドカップが開幕し、会員の皆様におかれましても一喜一憂の時を過ごされていると思います。一方プロ野球は1月の寒い段階から自主トレーニングを始め、幾つかの段階を経てレギュラーシーズンへ投入し、熾烈な戦いを秋口まで続けます。そして最初のトレーニングは選手個人の能力アップを目的にしたいわゆる打つ、投げる、走るという基礎能力を高めるために訓練をします。個人能力を向上させた次のクールは、守備練習や攻撃における連携を主としたチームプレーに多くの時間を割いて取り組みます。個人の能力がいくら優れてもチーム一丸となって戦うという姿勢を常にもっていること、そしてその訓練が常時訓練がされていないと勝つことは容易いことではありません。またチームは同じような技量や似た役割をもった選手が9人いてもチーム力としては強くなれません。そこには1番バッター、2番バッターと役割があり、守備においても投手、捕手、内野手、外野手と役割が明確になってこそチーム力がアップします。しかしながら「仲良しクラブ」的なチームは、よい状態の時はよいのですが、一回悪くなると低迷します。そこには個々の自立と責任が問われます。

 さて、我々の診療現場において考えてみますと、個々には優れた選手がたくさんおります。CT検査に秀でた人、骨撮影にプロ意識をもっている人、救急患者への対応に一言ある人など、長年の経験に裏付けされた知識と技能、そして患者接遇にと誇れる人が病院内にも、埼玉県内にもたくさんおります。しかしながらCTに秀でた人がいつもCTを担当する訳ではありません。骨撮影はいつも同じ人が担当する訳ではないでしょう。優れた人がいるということは、できる人のレベルを目標にして皆が追いついていけばよいので目標管理的には容易いのですが、なかなか考え通りに行かないのが現状です。重要なことは「組織目標の到達レベル」を何処におくかということなのです。

 製品(画像)を生産(作成)し市場(診察室)へ出す以上、そこには必ず出して良いケースと出してはいけないケース(再撮影)があります。例えばイチゴの出荷時には、当然ながら粒揃いのチェックを大きさや形や色により判断しているはずです。市場に出して恥ずかしいイチゴや市場が受け入れないイチゴ、消費者からお金をいただけないイチゴは除外されます。誰が作ったという問題ではなく、市場の論理で判断をしております

  我々の職場でそのところまで業務をきちんと品質管理されているでしょうか。仮に管理されているとしても、専門外の業務を担当する時間外業務に於いては甚だ心寒い限りではないでしょうか。その管理レベルはどうであろうか。新人が就職した時の最初の行動目標は「とりあえず当直ができること」を掲げますが、当直業務ほど多岐にわたり、判断を要する業務はありません。身近に相談できる人もなく、時間が早く過ぎて欲しいと思っている方も多いのではないでしょうか。到達点のガイドラインを何処におくのかは、その施設のおかれている状況により異なります。最近は病院の機能分担がすすんできましたので1,2次救急医療機関では無理して重症患者を受けない傾向にあります。検査や治療するためにスタッフを呼び集め時間外に不慣れな業務を実施し、問題を引き起こすより、より高度な専門的なスタッフの揃っている病院へ送ってしまうことが間々あります。そのことは患者にとってもよいことかもしれません。

 さて放射線技術部門では、どのような選手が求められるのでしょうか。野球のようなある程度守備範囲の決まったスタイルは、医療には適しません。やはり時間外業務を含めて

サッカースタイルのような、ある程度前、中、後ろと決まっていつつも、随時ポジションを移動して、ピンチの芽を摘み、チャンスを広げるような動きが望まれます。

 チームワークをどう育んでいくかということがよく議論されますが、成功者の論理は一貫して「勝つしかない、本物のチームワークは勝たないと育まれない。負けてもチームワークがよいというのは嘘だ」と言っています。勝つという目的のなかで選手がいかに貢献したか、そしてそれを評価してもらっているかが強いチームの絆であり証です。つまり何かの目標に向かいゴールを目指して職員が一つになり、成果をあげて自分の役割や仕事を評価された時に、よりチーム力は高まると感じます。

 認定技師資格を取得して個人レベルを向上させることは必須なことですが、それだけでは病院に貢献できないことは皆様ご理解されていると思います。放射線技師の組織集団として、日本放射線技師会医療被ばく低減施設認定にトライなどチームとしてのゴールを目指し職員のベクトルを合わせてチーム力を向上させましょう