2007

No.4

埼玉放射線Vol.55

■巻頭言

「入会のススメ」
埼玉県放射線技師会  副会長  磯田一巳 
 昨年は1655名の診療放射線技師が誕生し、本会にも50名入会していただきましたが、会員数は前年より僅かですが減少してしまいました。退会者が多いのでしょうか?未入会者が多いのでしょうか?会員数の減少は各地方技師会も同じような状況です。職能団体としての技師会は必要とされていないのでしょうか?

 技師会への入会を勧めると、必ずメリットは?と聞かれます。私は「確実にスキルアップできること」と答えます。わたしの経験からの本音です。技師会に関わったのは、誘われて参加した地区の花見大会でした。航空公園で地区の皆様といろいろな話をして、おいしいお酒を飲んで、とても楽しかった思い出があります。それから納涼会、ソフトオール大会、忘年会とまずは厚生事業に参加し、徐々に地区勉強会にも参加するようになりました。それまでは職場の中だけの狭い範囲での交流でしたが、地区活動に参加してから、近隣施設との交流が始まり、友人、知人が増えていきました。勉強会終了後の懇親会も楽しみでした。撮影方法のアドバイス、新しい機器のこと、被ばくについて、学術発表論文等議論することは山ほどありました。特に埼玉県放射線技師会でバスを連ねて参加した、メーカーの那須工場の見学会が、会員同士の輪を広げてくれました。

 本会では、毎年、新人技師を対象としたセミナーを開催し。受講された多くの方が入会しています。以前はフレッシュセミナーとして新人技師を対象としていましたが、数年前よりSARTセミナーとして会員も対象するようになり、初心に戻るよい機会と好評を得ています。今年は7月15日(日)、埼玉県立がんセンターにおいて開催されました。技師会活動、研究会活動、認定技師制度等について分かりやすく説明があり、その後、胸部撮影の基礎とポイント、右脳で考える簡単一般撮影法等について実践的な講義がありました。昨年のセミナー受講後に入会した会員に尋ねてみると、新人技師として、一番難しく感じていたのは、患者さんとの接し方であり、頭で分かっていても患者さんとの対話、コミュニケーションがうまくできなくて、患者さんと話す時はいつも緊張していたといいます。受講後、医療機関に戻り、一般撮影業務の中で、患者さんより被ばくについて聞かれた時、満足な回答ができなかったので、技師会へ入会して勉強しなくてはと感じたことが、入会の理由だそうです。

 現在では、核家族世帯がほとんどであり、家族間での会話も減り、技師になって、急に患者さんと対話しろという方が無理かもしれません。また、相手に対する思いやり、気遣う気持ちも希薄な社会となってしまった感じがあります。
 患者さんは、撮影してくれる技師が新人かベテランか見分けがつきません、できればベテラン技師に撮影してほしいと思うはずです。胃の検査、大腸の検査、CTの検査等信頼して身を任せているのに、検査について質問をしたら答えられないのでは不信感がつのるばかりです。

 時代の変化と共に、医療を取り巻く状況は厳しくなり、患者さんの医療に対する要求も増してきました。このような中で、患者さんのニーズにどのような方法で応えていくかを考える必要があります。
 以前は多くの施設で患者さんの名前に「様」を付けることがサービスの一環だと思われ、一時的に流行りましたが、このところ「さん」にもどりました。うわべだけの呼称より、本質的なサービスに気づいた結果ではないでしょうか。
 やはりサービスとは、患者さんがなにを要求しているかを、事前に察知して素早く対応することで、安心感と信頼関係で応えていくことではないでしょうか。患者さんの満足度だけでなく、医療に関わるスタッフの満足度もアップさせていくことも大切なことです。

 について数年たった技師から、チーム医療の一員として自分の仕事に誇りを持ち、患者さんの立場になって考えられる放射線技師になりたいと相談されたことがあります。
 そこで私は本会は、会誌出版事業、学術事業、公益事業、福利厚生事業の他に専門分野の研究会として7研究会があり、研究会主催セミナーは年間30回以上開催していること。医療画像展・市民公開講座は、18年度は各地区会において9回開催しており、6つの地区会での勉強会も年間15回以上開催していること。会員はどこの地区のセミナーでも受講できることを伝え、興味があるセミナーや講習会は必ず受講し、そして、地区の役員に立候補し、地区活動に没頭するようにアドバイスしています。そうすると2年後には、技師として技術・技能はもちろんのこと、自分の中で意識改革が起こっているはずです。患者さんからの要求も的確に対応できるようになった。機器のこと、撮影技術も自信がある。しかし、評価するのは、管理者でも技師長でもない、患者さんであることを忘れてはなりません。
 今後は、さらに医療サービスが求められ、さまざまな要求に対し、的確に対応できるスキルを維持していくために、日々研鑽を積む努力が必要となります。そのためにも、技師会が必要になってくるのです。

 今年の3月に行われた国家試験では、2159名の診療放射線技師が誕生しています。会員の皆様におかれましては、身近に働いている放射線技師に対し、技師会は若いうちに入会すべきとお話して、入会を勧めてくださるようお願い致します。