2008

No.1

埼玉放射線Vol.

■巻頭言

「あいさつは明るく元気にこちらから」



埼玉県放射線技師会  会長  小川 清


 新年あけましておめでとうございます。会員の皆様お元気でお過ごしとのこと、お喜び申し上げます。また平素はなみなみならぬお引き立てを心より感謝申し上げます。

   最近気になることがあります。それは挨拶。自分から挨拶する人が少ないことです。気持ちのいい挨拶をして、心を開き相手に近づけば、挨拶された人の心も開き近づいてきます。

 標記「あいさつは明るく元気にこちらから」は平成10年に以前勤務していた病院での業務改善・活性化を図るための標語に応募し、入選したものです。当時同じ部署においては曲がりなりにも挨拶がされていたのですが、部署を超えた職員間の挨拶はなく、まったく知らん顔状態でした。1500名を超える職場では致し方がないと思っておりましたが、3年前に異動した勤務先では、最初からまったく知らない方からも明るく挨拶をいただき、現在に至っており大変嬉しく思っております。病院の建物に一歩入れば誰それ構わずにこやかに挨拶しましょう! 誰でも構わないのです。元気の良い、感じのいい挨拶をされて、嫌に感じる人はほとんどいないです。

  病院は多くの専門職の集合体であり、また24時間365日現在進行形の業務です。仕事を通じて人間が成長していくにはどうすればよいのか。これは業務に精通したベテランや業務経験の浅い新人に関係なく常に重要な課題です。医師や看護師のみならず患者さんに接するすべての職種がいつもスマイル溢れる態度で、365日患者さんに接するからこそ信頼を得ることが出来ます。個人の豊かな感性が求められます。でも人材にバラツキがあったらスマイルは約束されません。さらに内外の要因でスマイルが失われているならそれを回復させる仕組みを作らねばなりません。

 コミュニケーションが滞ると仕事に支障が出るのはあっという間です。先日こんなことがありました。患者さんが造影検査に来院している時に造影剤の在庫を切らしていたのです。年に数回しか実施されない特殊な検査であり、特殊な造影剤であったこと、以前使っていた造影剤は回収されていたことなどが重なりました。事例検討として造影剤に係わるスタッフとして看護師、薬剤師、放射線技師、事務員等に聞き取り調査を行いました。個々には責任を果たしていたにもかかわらず、年末年始の業務中断による影響もあり、患者さんにご迷惑をおかけしてしまいました。突然発生した要因に対してきちんとした危機管理によるスタッフシステム対応が出来ていなく、コミュニケーション経路の動脈硬化が起きていたと判断し改善策を講じました。

 技術革新は医療機器に大きな進歩を及ぼし、結果的に自動化された部分もあります。しかし我々放射線技師の業務は患者さん相手の業務であります。そして今まで私「撮影する人」、あなた「撮影される人」と立場をはっきり分けてきました。つまりサービスを提供する側と受ける側にはっきり線を引いて分けていました。ある意味それは正しいのですが、良質な画像を提供するためにより時間をかけたり、患者さんに無理な体位をとらせ苦痛を与え、それが患者さんのためになるのだと独りよがりの発想に陥っておりませんでしたか。そうなんです。はっきり分けてしまうと放射線技師が患者さんの気持ちを察するということが出来なくなってしまうのです。患者さんと同じ時間、空間を共有し、目的に向かって共同作業を行っていくことこそプロ放射線技師なのです。そのためにはコミュニケーション力を必要とします。それも撮影前わずか「15秒間」にコミュニケーションがとれることを要求されます。

接遇する心を「言葉」と「形」で演出するプロ放射線技師を目指して