診療放射線技師会の情報を提供いたします。

放射線Q&A

私たち診療放射線技師は、医療の現場で放射線の有効利用を担当する専門職です。
国民の皆さんが健康で豊かな社会生活を営むことができるように、利益と損失のバランスを常に考慮しながら業務を進めていますので、安心してX線検査を受けてください。

一般的なQ&A

放射線に関する、一般的なご質問と回答です。

最近、繰り返しX線の検査を受けているが、大丈夫か?

撮影した部分が違う場所であれば別々に考え、同じ場所であれば、検査の種類と受けた期間および回数がどれくらいになるかを考えます。
検査の種類にもよりますが、身体(妊婦を除く)に影響があらわれる回数は、腹部撮影でおよそ1000回、頭部撮影で600回、CTで40~140回位です。
しかし、身体には細胞を修復したり再生する能力があり、放射線による影響は蓄積されるものではありません。
必要以上の検査を繰り返し受けているのでなければ、人生のある時期にX線の検査が集中しても、身体の異常の有無を検査することの利益(メリット)の方が非常に大きいといえます。

放射線と聞くと何か怖いように思うのですが。

私たちは放射線を五感に感じることはできないので、不安に思うことは多いと思います。
しかし、私たちの身の回りの自然界にも自然放射線というものがあり、
人類(生物)は皆、その誕生以来ずっと自然放射線を受けながら生活しているのです。
世界には、日本人よりも多くの自然放射線を受けている人々がいます。中国で自然放射線の強い地域の住民に
ついて健康調査を実施した結果、周辺の地域住民との比較で、がんになる人や子供の遺伝性疾患の割合に差はありませんでした。
ラジウム温泉などでは、含有放射能の濃度が高いほど珍重されます。このような温泉には、高い放射性のラドンを多く含んでいますが、地元でがんの発生率が高いということはなく、逆に長寿の人が多いことが認められています。

放射線を浴びるとがんになるの?

わが国では、4人に1人の割合でがん(自然がん)になり死亡しています。
その原因には、化学物質(ダイオキシンなど)やウィルスなどがあげられ、その他に、紫外線や放射線によるものもあるといわれています。
放射線が人体内を透過するときに、細胞内の染色体を傷つけたり切断することがあります。
しかし、人間(生物のすべて)には、損傷した細胞を修復したり再生する生体防御機構が備わっているので、細胞が放射線による損傷を受けても、それがすべて発がんにつながるとは限りません。
つまり、放射線被ばくによる発がんは、例えば、車に乗って交通事故にあうかあわないかと同じように確率の問題です。
広島・長崎の原爆被爆者を対象に行われている調査によると、200ミリシーベルト(胸部撮影1000回以上)よりも低い線量では、放射線被ばくによる発がんの心配はないといわれています。

健康診断や人間ドックで放射線の検査を受けることについて不安があるのですが。

生活習慣病の対象年齢に達した人々が、定期的に健康診断を受けることによって、病気の早期発見と治療が可能になることは、予防医学という立場から大変重要な意味を持っています。
健診でおこなう放射線の検査で受ける被ばく線量は、自然放射線による被ばくと同等かそれ以下の線量です。
このことから、放射線の影響を心配するよりも検査による利益(メリット)の方が優先されるといえるでしょう。 このような例えは適当でないかもしれませんが、車の定期的な車検制度は、車を安全に走らせるために必要なことです。
人間は車のようにダメになったから新しいのに替えるということはできません。世界でたった一つの自分の体を一生大事にするためにも、年齢を考慮して定期的に健康診断を受けることはとても大切なことです。

皆様からのQ&A

埼玉県県民の皆様方から当ホームページに寄せていただいたご質問へのお返事です。
埼玉県診療放射線技師会は、県民の皆様のご質問をお待ちしております。
実際のご質問とそれに対する埼玉県診療放射線技師会からのご返事を要約して掲載させて頂きたいと思います。
皆様の参考になりましたら幸いです。
また、質問していただいた方のお名前などは伏せさせていただきますのでご了承下さい。

2歳になったばかりの娘が、先日頭部をうちCT検査をしました。
そのときに先生に「小さな女の子だし、害が無いわけじゃない」といわれました。どのような害があって、どんな心配があるのか教えてください。

頭部打撲を診断・治療する上で、今回受けられたCT検査はとても大切な検査 です。また頭部CT検査は、全国の病院で小さいお子様からお年寄りの方まで、毎日多くの方が受けている検査です。その一方で、検査で受ける放射線の影響を心配するご質問も多く受けます。
頭部CT検査で放射線の影響を受けやすいといわれているのは眼の水晶体なので、私たち診療放射線技師は、なるべく水晶体に放射線があたらない角度で検査をしています。
放射線の影響を受ける最小の量をしきい線量といい、この線量より少ない被ばくでは影響が発生することはありません。
今回のCT検査による水晶体の推定被ばく線量は、しきい線量の10分の1以下と考えられますので障害が発生することはありません。また、この10分の1というのは一度に(ごく短期間に)10回以上検査を受けたらということなので、今後長い期間に、経過観察等で同じ検査を受けても心配はありません。
キーワード
※ 1.ミリグレイ:放射線による影響を表す単位です。
※ 2.しきい線量:放射線の影響を受ける最小の量。このしきい線量より少ない被ばくでは影響が発生することはありません。

妊娠4週5日目ですが(まだ市販の検査薬反応のみ)、今月末に卵巣の腹腔鏡検査を受ける為に手術前の検査で胸のレントゲンを撮りました。
後から知ったのですが、月経開始から10日以内(10日規則)であれば問題ないとのことですが、
私はちょうど月経開始から15日目(だいだい28日周期)排卵前後の時期に撮影しました。
ネットなどで調べてみると歯科・胸のレントゲンは問題無いとされていますが、不安です。奇形・流産・精神発達遅延など、絶対に問題ないのでしょうか?
それと、妊娠2・3ヶ月ごろだと問題あるのでしょうか?

私たち診療放射線技師は、同じように、レントゲン検査を受けたあとで、妊娠していることがわかり、放射線の影響がとても心配になったというご質問を時々受けています。
新しい命のお誕生に、お慶びいっぱいのところで、今回のレントゲン検査が、逆に、とても大きな不安をつくってしまったこととお察しいたします。
しかし、結論から申し上げますと、この度のことは、今あなた様が考えているほど大変なことではなかったと、私たちは自信を持って断言することができます。
仮に同じ状況が、私たちの妻や娘であったとしても、同じように安心させて、赤ちゃんの誕生をとても楽しみにしていることと思います。
まず、月経開始から10日以内に行った方が良いとされるのは、お腹の下の方(下腹部)を撮影する検査の時で、ネットでお調べになったように、歯科や胸の撮影では、その対象となっていません。それは、放射線の量が、検出するのが難しいほど、非常に少ない量であるからです。この地球上の自然界にも、宇宙や大地から自然放射線というものが存在していて、私たちはその中で生活していることをご存じでしょうか。先の非常に少ない量とは、この自然放射線と同じ程度の量であります。
もう一つの例で、東京からニューヨークヘ航空機で行った場合、今回のおよそ10倍の自然放射線を受けることになります。もちろん、妊娠の可能性のある方や妊娠初期の妊婦さんが、航空機に乗れないということは、聞きませんよね。繰り返しになりますが、今回の放射線は、測定するのが難しいような、そのくらいの量でした。ですから、胸のレントゲン検査を受けたという点に関して、他の妊婦さんとの間で、その影響について、明らかな違いを指摘することはできないのです。
私たち診療放射線技師は、医療の現場で放射線の有効利用を担当する専門職として働いています。この度のレントゲン検査が、深くご心配になるほどではないことをご理解いただければ幸いです。私たち埼玉県放射線技師会では、いつでもあなた様のようにレントゲン検査に関してご心配になっている方の力になりたいと考えております。

妊娠中に、胸部エックス線写真をとりました。胎児への害は?
月経開始から10日以内(10日規則)であれば問題ないと聞きましたが、どういうことでしょうか。

検査を受けていない妊婦さんと、明らかな違いを指摘をする事は困難です。
今回のケース 手術を受けるために必要な検査ででした。
胎児への影響は? 検査を受ける前と変わりません。
障害は? 検査を受ける前と変わりません。
10日規則とは? 下腹部を撮影する時のみ、月経開始から10日以内に行う方が良いとされる。
補足 10日規則は、歯科や胸の撮影などは対象になっていません。これは、放射線の量が調べるのが難しいほど、非常に少ないからです。(※1)

※1.私たちは日常から地球上で「自然放射線」を受けています。この量と同じ程、少ない量です。
自然放射線の量は、地域により異なりますが、このために妊婦さんや胎児に放射線の害が起こっているという事はありません。
地域と自然放射線の例
①例えば、中国、インドやヨーロッパのある地方では、あなた様が胸部エックス線検査により下腹部に受けた放射線量を、毎日、何十年と受けています。この地方で、障害を持った赤ちゃんの誕生や遺伝性の病気が多いという事はありません。
②飛行機で東京からニューヨークへ行く時に下腹部に受ける放射線量は、あなた様が胸部エックス線検査により下腹部に受けた放射線量のおよそ10倍です。しかし、妊娠の可能性のある方や妊娠初期の妊婦さんが飛行機に乗れないという事はありません。